プラス・エデュケートで、一人前の教師となる過程において、「子どもを叱れない」ということで悩む教師が少なくありません。子どもたちが、いつも自発的に学習に取り組んでくれて、教師の指示を聞いてくれれば、その必要はないのですが、現実には、授業に集中していなかったり、宿題をわすれたり、子どもどうしでけんかしたりと、様々な問題がクラスには起こります。数か月間、複数人が毎日一緒に過ごすのですから、問題は起こるのが普通です。
子どもは叱らずに、「本人がやる気になるまで温かく見守りましょう。」とか、「集中できるように授業を工夫しましょう。」というのは、もちろんその通りです。確かに、叱ることで教師も子どもも嫌な気分になり、クラスが暗い雰囲気になることが多く、叱りたくない、叱っても意味がないというのも理解できます。しかし、本当にそうでしょうか。
数年前から「友達親子」という言葉を聞くようになりました。親子の仲が良いのは結構なことですが、子どもが間違ったことをしたり、人に迷惑をかけるようなことをした場合には、保護者はきちんと叱り、諭すことが必要です。しかし、最近では「家庭では子どもを叱れないので、学校で子どもを叱ってください。」というあきれた保護者もいるそうです。実際、外国人保護者の中にも「子どもの気持ちが大事。やりたくないならやらなくていい。」と先生や支援者のアドバイスに耳を貸さず、日本語も学習にも真面目に取組ませなかったのに、「だれも教えてくれない、だれも助けてくれなかった。(だからうちの子どもが困っている)」と訴えてくる人もいます。
私は日本で暮らす以上、日本語をマスターすることが子どもたちにとって、必須だと考えています。だから、初期指導が重要であり、それを修了したからといって、彼らの学びが終わるわけではなく、そこから本格的な学びが始まるのですから、初期指導の段階でどこまで彼らの日本語力を引き上げられるかが私たちに問われているのだと考えています。
ですから、子どもが明らかに怠惰である、あるいは間違っていると判断した場合、私は小学1年生だろうと、容赦せず叱ります。涙を流す子どもも少なくありません。新任の教師は私の態度を見て、あんなに叱らなくてもよいのではないかと思うことでしょう。しかし、ほとんどの場合、子どもたちは少しずつ頑張るようになり、そしてはじめは日本語が全く話せなかった子どもが驚くべき程の変化をとげ、卒室していきます。また、叱ったからと言って、子どもとの信頼関係が壊れてしまうこともほとんどありません。それは、子ども自身がなぜ叱られたかを理解し、改善すれば、日本語がわかるようになるだけでなく、友達との関係性もよくなることが分かったからだと思います。
日本語学習だけではありません。特に、10歳までの子どもの場合、時間を守る・約束を守る・人のものを取らない・借りたものは返す・人を傷つけない・嘘をつかない・悪いことをしたらあやまるなどの人間としての基本的なルールも教える必要があり、それは「友達や人との関わり」の中で、学んでいくものです。日本語教室は多様な子どもが一緒に学びます。だからこそ、必要なときに、いいタイミングできちんと叱り、子どもの行動と考えを正していくことが重要だと思うのです。しかし、叱るときには気を付けなければならないことがあります。それは次回にお話したいと思います。
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