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執筆者の写真理事長 森 顕子

責任を持たせること

更新日:2023年6月17日


 子どもは赤ちゃんの頃から、言葉を発しなくても「笑う」「泣く」という動作や表情で、意志を伝えていますが、「食べる」「いらない」「ほしい」などの言葉で自分の意志を伝えだすのは 2歳くらいからでしょうか 。

 意志の表明は「いるのかいらないのか」「ほしいのかほしくないのか」「(どっちが)好きか嫌いか」という程度から始まるのだとして、おそらく5歳や6歳になれば、どんなに親が勧めても、「いやなものはいやだ」とか「したくない」と、 はっきり意志を示すようになり、閉口してしまうという場合もあるでしょう。

 しかし、栄養バランスを考えた食事を好まず、お菓子ばかりを食べている場合、多くの親は、子どもが何とか「自分の意志」で食べてくれるように調理の工夫をすると思いますし、熱があるのに、学校に行きたいというからと行かせる方もいないことでしょう。命や健康に関わること以外であれば、なるべく本人の意志を尊重するというのが、ほとんどではないでしょうか。

 しかし、子どもが成長して、次のようなことを言った時、どのようにされますか。

 ・(自分から入りたいといった)クラブ(または習い事)を、やめたい。

 ・勉強は面白くないから、やりたくない。

 ・学校には行きたくない。  


 人生は、食べものや衣服、音楽、趣味、友人、仕事、生き方、思考などすべてのことにおいて、自分で選択し決定することの積み重ねと言ってよく、決定できないのは「死期」だけでしょう。もちろん、環境や境遇によって、自分の意志だけでは決められないこともあるかもしれませんが、それでさえ「その状況を受け入れる」という決定をしていると言えます。

 ならば、子どもを教育していくうえで大切なことの一つは、「自分が納得のいくような判断や決定をさせ、それについて責任を持たせる」にあるといってよいでしょう。

 では具体的に何をすればよいのでしょうか。

 例えば、先ほどの例では クラブをやめたいといった子どもに、『そもそもなぜそのクラブに入ったのか』『どうしてやめたいと思ったのか』、『もし仮に続けた場合はどんな状況になって、やめてからはどうなると考えているのか』『やめたいと思った理由は解決できるものなのか、できないのか』などを、子どもに考えさせ、その意見を親は聞いてやり、時にはアドバイスや選択の範囲を与え、自分自身で再度「やめる」という結論に至った場合は「やめるときの手続き」をきちんと踏まえさせることが、「責任」を持たせるということにつながっていくのだと思います。

 子どもの成長に伴い『何がしたいのか』『どうしたいのか』『どうなりたいのか』を尋ねるだけでなく、『どうしてそう思うのか』『何が問題なのか』『どうやって解決したらいいと思うか』などを親子できちんと話し合っていくことが、必要です。小さいころから、何度も同じような対話を繰り返していくことで、親も子どもも本当に大切なことはなにか、やりたいことは何かがわかっていくのではないでしょうか。子どもはその過程で、「自分の意志」を表現するスキルを身に着けていくのでしょうし、意志を表明したら、そのあと責任が伴うことがわかっていくはずです。

 最近、勤めた会社を辞めたいが、それを上司に言い出せないからと、「退職手続代行会社」に頼る人がいるそうです。そんな会社があることにも驚きましたが、自分のしたことに「責任を持つ」ことは、一朝一夕にできることではありません。

 仕事と家庭を両立している方は、時間の余裕がないからできないと言われるかもしれません。でも、私はテレビの中のフィクションより、現実の子どもの話を聞くことのほうが、はるかに面白いことだと思います。なぜならテレビの中の世界に対しては「傍観者」ですが、子どもの人生には深く関わる「当事者」なわけですから。

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